7月例会のテーマは、「絵巻のアニマシオン&メディアリテラシー」。
絵巻と映像の表現の違いや、絵巻の魅力の一端を皆様にご披露したい
という思いで発表に臨みました。
例会での発表を終え、最も嬉しかったのは、皆さんが手製の
『長谷雄草紙絵巻(4/5サイズの縮小版)』に感動してくれたことです。
絵巻の発表で絵巻で見せないことは全く考えられなかったので、
絵巻を作成することは最初からのプランでした。
発表前の一週間は、
?絵巻をプリントする紙は和紙が良いのでは、
?いや絹目の方が格調高いのでは、
?元々の紙の切れ目と新しいつなぎ目が上手く繋がるか、
?絵巻の軸をどうするか、
?見せる際にどのように見せたら良いか、
・・・などなど、
頭の中に大きなカオスを抱えながら、一紙ずつ繋いでいきました。
作ってみると、絵巻物がそれなりに存在感を持つことを実感したので、
当日会場設営の工夫で、どう見せるかはなんとか乗り切れるのでは、
と当日を迎えました。
この発表でのもう一つの課題は、
「四大絵巻」の全容を皆様にお見せすること。
アマゾンの中古本サイトで『信貴山縁起絵巻』、『源氏物語絵巻』を
格安に入手し、地元の図書館から『伴大納言絵巻』を借り、残る
『鳥獣人物戯画』も借りようと考えていました。
しかし、2日前日に行ったところで入手を断念し、
メールで皆様に御断りをしました。
当日も一応地元の図書館に足を運びましたが、ありませんでした。
私のSOSにジャスト・イン・タイム、タイムリーにお応えくださった
高橋さんが、当日の夕方に図書館から『鳥獣人物戯画』を借りて
くださったので、「四大絵巻」はなんとか皆様の前にそろい踏みする
ことができました。
日本を代表する絵巻が、
一同に会するのはなかなか壮観でした(自己満足)。
会場には中山さんが先にいらしており、
絵巻はバーっと開いていく方が良い、ということになり、
入口の引き戸も外してテーブル4本をセットしました。
いつもの例会とは全く違った、超・異例の会場レイアウト
となりました。
異様な雰囲気に、訪れた皆様もびっくり、落着かない様子でした。
手製の絵巻は、A4サイズ、幅約21センチの紙が39枚ですから、
819センチで約8メートルの長さになりました。
実物が約10メートルですから、コピーは約4/5のサイズだったことに
なります。
発表前に、最初の一紙から最後を低い目線で見ると、
我ながらなかなか良い景色・・・・
という満足感に浸れました(これも自己満足)。
発表内容は、「7月例会報告」に詳しいので、
省略させて頂きます。
絵巻についての考証は
さまざまな学問分野から多面的に実践できる、
それだけに絵巻は奥深いし、
歴史史料として素晴らしい文化財である、
という私の結論を裏付けするような、最近発見した市井の研究者の論を
ご紹介しましょう。
?『長谷雄草紙』の成立年代について、
実際の長谷雄の生きた時代の「装束」の色からの考証です。
ブログ『こおり砂糖の小説庫』の記事で、作者の経歴等は不明です。
(※以下、抜粋要約しました。)
☆長谷雄は888年、43歳で「従五位下」に叙位されています。
☆貴族と言われるのは、「従五位下」より上の位階で、
それより下の位階の者は「内裏に昇殿」出来ません。
☆衣装の色は階級によって、明確に決まっていました。
☆一条帝時代(980年~1011年)以前は
一位深紫(こきむらさき)、
二位、三位が浅紫(あさむらさき)、
四位が深緋(こきひ/濃い赤)、
五位が”浅緋(うすあけ/薄い赤)”、
六位が深緑(ふかみどり)、
七位が浅緑(あさみどり)、
八位が深縹(ふかはなだ/濃い水色)、
初位が浅縹(あさはなだ/薄い水色)、
簡単に言うと、
紫→緋(赤系)→緑(グリーン系)→縹(ブルー系) という序列です。
☆一条帝時代以後、つまり11世紀の初頭以後の「装束」の色は、
一位~四位が黒橡(くろくぬぎ)、
五位が蘚芳(すおう/紅紫)、
六位が深縹(ふかはなだ/濃い水色)、
七位以下は決まりはなくなっていますが、大体が紫です。
黒→蘚芳(赤紫)→縹(ブルー系)→紫 という序列です。
☆長谷雄の生きた時代ですと、着用しなければならない衣装の色は”浅緋”
(うすあけ/薄い赤)ですが、『長谷雄草紙』書いた絵師は、長谷雄の
衣装を黒として描いていますから、自分が生きていた時代、つまり13世紀
の貴族の装束を描いているのではないでしょうか?
・・・という記事でした。
但し、この衣装の色はハレの日、公式行事の時の決まりで、
日常的な参内でも適用されたかどうかは不明(未調査)です。
とはいえ、いろいろな角度から考証・考察できる絵巻の魅力に
改めて感心させられました。
今回の発表では、絵巻と映像の表現の違いを映像作家として検証する
意味もあったので、新たな発見目白押しで、絵巻の奥深さ(奈落の底まで)に
引きづりこまれそうな感がしました。
(記:齊藤正純)
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